Department of Nuclear Engineering and Management FUJII-KOMIYAMA Laboratory     Graduate School of Engineering                                            University of Tokyo
 研究テーマ概要 


最近は以下のようなテーマに関心を持っています。

  • 大規模な世界エネルギーシステムモデルによる地球温暖化問題対策の評価や、日本のエネルギー安全保障政策・環境政策のゲーム論的な検討

  • 人工市場モデルを用いた各種電力関連市場の制度設計や課題の抽出

  • 確率動的計画法や金融工学的手法を用いたエネルギー関連分野における不確実性下の意思決定支援やリアルオプション評価

  • 分散型エネルギーシステムの導入拡大が日本のエネルギー需給に及ぼす影響のボトムアップ評価

  • 非化石エネルギー資源を活用したオール電化社会、ならびに水素社会の実現可能性の評価と、その技術的・経済的意義の検討


 研究テーマ

マルチエージェント型の世界エネルギーモデルを用いたエネルギー安全保障政策の評価

エネルギー安全保障の確保は優先順位の高い国家的政策課題である。しかしながら、これまで開発されたエネルギー需給モデルは、個々の国家の国益が対立する状況も想定されるエネルギー安全保障の評価を適切に行うことはとても困難である。そこでは、エネルギー市場の完全競争や、調和のあるエネルギー貿易の均衡状態の実現が仮定されているからである。本研究では、各国は独自の国益の最大化を行うという仮定の下、マルチエージェントシステムとして定式化されたエネルギー需給モデルにより、利害関係に相関を有する複数の国家のエネルギー需給戦略をコンピュータ上でシミュレーションする。

地球温暖化対策の国際的政策評価

効率的な温室効果ガス排出抑制を目指した一連の京都メカニズム(排出取引、共同実施、クリーン開発メカニズム)の解析を、最適化型の世界エネルギーシステムモデルに基づいて行う。本研究で用いるモデルは、各種省エネルギー技術、原子力、自然エネルギーの活用、CO2の除去・固定・貯留技術など多くの地球温暖化対策オプションを考慮し、技術的経済的に最適なCO2削減対策を探索するものである。

市場価格の不確実性を考慮した確率的最適電力調達戦略に関する研究

電力の小売事業者は、需要家の代わりに卸売市場の価格変動から生じるリスクを引き受けることになる。このことは、この不確実状況下における最適電力調達戦略の作成手法の開発が必要であることを意味している。本研究では、規制緩和された電力市場における電力調達のための長期相対契約の価値や、小売事業者が自家発電設備を有することの価値を、確率微分方程式を用いた動的計画に基づいて評価する手法の提案を行う。

送電権市場の制度設計に関する研究

経済性を追求するために、世界的に電気事業の自由化が進められている。自由化された環境での電力系統の各種計画は、従来とは大きく異なり、自己の利益を追求する複数の意思決定者による競争あるいは協調を考慮に入れて立案されなくてはならない。本研究では、自由化された電気事業における送電権市場を送電ネットワークモデルならびにゲーム理論に基づいて定式化し、市場の挙動解析を、マルチエージェントを用いたコンピュータシミュレーションを通して行い、その制度上の問題点等を明確にすることを試みる。

分散電源の大量導入が日本の電力系統の計画・運用に及ぼす影響の評価

従来からの電力ネットワークに加え、分散電源を効率良く配置し結合できれば、経済的にも環境的にも優れた電力供給システムを形成できる。本研究では、個々の家庭でのエネルギー需要を模擬する積み上げ形のシミュレーションモデルと、家庭における分散電源の最適運用戦略を導出する確率動的計画モデルとを統合したエージェントモデルを構築し、数千件オーダーの家庭のエネルギー需給パターンを模擬的に生成し、分散電源の大量導入が系統電源の計画運用に与える影響を評価する。

小規模自律分散型電力供給システムの協調的運用に関する研究

太陽電池や燃料電池などの分散型電源、そして二次電池などの分散型電力貯蔵装置の普及が見込まれている。また、情報通信技術の進歩により実時間料金制の実現可能性も高まっている。本研究では、証券取引場の売買方式やインターネットのパケット伝送方式を参考に、局所的価格情報による自律分散制御と戦略的意思決定による間欠的送配電を基本とした革新的な電力ネットワークの構築方式を提案し、数値シミュレーションを通してその可能性評価を行う。

電力取引の流れ